象を撫で続けるように―日本行政学会in沖縄

松山大学法学部准教授 甲斐朋香

 先日、沖縄で開かれた日本行政学会へ行ってきました。

 学会は、最新の研究動向に触れ、全国の「同志」との情報・意見交換も出来る貴重な機会です。そしてまた開催地の歴史や文化や風土に触れることも重要な学びであり、楽しみのひとつなのです。今回もまちを歩き(走り?←レンタカーで)、ご当地の食べ物(お酒も少々?)を味わってきました。

 かつてない観光ブームに沸く沖縄。一方、基地をめぐる問題では、国と県の間で緊迫した状況が続いています。学会前日、私たちは辺野古を訪れることにしました。辻々に立つ「石敢當(いしがんどう」(魔除け)を見つけては喜び、「軍用地あります」の看板にドキリとし、基地の大きさと多さを改めて実感し、エメラルドグリーンの海に感嘆し、恩納村の道の駅「おんなの駅」の看板に笑い、巨大なリゾートホテルをいくつか通り過ぎ…そうして「テント村」に辿り着いたのは「座り込み」の終了時刻間際でした。珊瑚や貝殻が散らばる人気のない海岸を歩き、20分ほどでその場を離れました。

 その晩は、沖縄に赴任中の旧友や、ベテランの沖縄県庁マンの方も交えての食事会でした。旧友が案内してくれたのは石垣島出身の方が経営するお店。気の好い兄ちゃんふう(失礼!)のご主人は、時間が来るとやおら三線(さんしんを手にし、沖縄の唄を歌い始めました。その合間には、沖縄の風土や人のこと、そして戦争や基地の話などを、明るい語り口で挟みこみます。最後はカチャーシーもあり、店内は熱気に包まれました。

 そんなライブの後、県庁マンが三板(さんば(琉球式カスタネット)を借り受け、指でちょっと鳴らしてみせて下さいました。実はこの方とは初対面。今回参加できなかった仲間が「是非ともお会いしておきなさい」と紹介してくれたのです。沖縄で生まれ育ち、知事からの信頼も篤いとあり、貴重なお話も色々と伺ったのですが、そのときの、はにかみつつも誇らしげな表情は、殊に鮮烈に印象に残りました。

 翌日の学会では沖縄独立論も飛び出しました。空き缶で三線を、空き瓶で琉球硝子をつくり、どんなときにも唄や踊りを愛してきた沖縄の光と影。その全容を掴もうとすることは、闇の中で象を撫でるようなものかもしれません。それでもせめて知る努力は怠るまいと自戒しつつ、帰途についたのでした。