2ちゃんねるですか? Twitter ですか? YouTubeですか?

松山大学法学部教授 妹尾克敏

 あなたの日頃の情報源は、この3つの中に入っていますか?まさか、NHKテレビや朝日、毎日、読売新聞などではないでしょうね。大学の法学部は、社会生活と密接に関わる法学(法律学と政治学)という学問を学ぶところですので、社会生活に関わる、何らかの情報に接していなければ、学問そのものを理解することはもとより、本来、身につけるべき知識が増えることも期待できません。

 二人以上の人間が同じ時間と空間を共有する「社会」において一人一人が意味のある人生を切り開いていくためには、何らかの方法や手段によって、自分以外の人達の考えていることや感じていること、ひいては生き方を理解しておくことが求められるということなのです。たとえば、同じ曲を聴き、同じ絵を見、同じものを食べても、自分と聴き方、見方、味わい方が全く同じだという人はいないはずです。家族であっても、同じ価値観を共有してはいないのです。そのために、自分自身の存在を確かめ、唯一無二の人生を設計するためにも、さまざまな情報源から情報ネタを入手し、役に立つものや気になる情報の中から自分に必要な情報を取捨選択することは決して避けられません。

 ところが、最近は大学生を含む若い人達の間に急速に浸透している Sソーシャル N・ネットワーク S・サービス のおかげで、真偽の程をはじめ、誰が、いつ、どこで、どうしたネタかさえ不明のまま、洪水のように流されているのが現実です。食事でも、嫌いなものは遠慮なく食べ残し、この種のネタは疑問なく受け入れ、仕入れたばかりのネタをいち早く誰かに教えて、友達の輪を広げ、自己満足に陥っている人も少なくないでしょう。誰かとご飯を食べるときも、カフェでお茶するときも、お互いに会話することなく、常に手に持っているおしゃれなスマートフォンでSNSにアクセスし続けている、という光景は今や日本のそこここでお目にかかれます。

 そんな場面では、大量の情報を慎重に比較検討したとしても、そのままでは自身の人格形成は望めません。「自己実現」のためには、他人の存在と自らの価値観の正当性を検証する道具が必要なのです。ドイツのハイデッガーという哲学者も、「人の存在は他者との共存である」と言っているぐらいですから。

 というわけですので、2ちゃんねるやTwitter やYouTubeだけが情報源ではあまりにも寂しい、と言わざるを得ないところなのです。