過去/現在/未来

松山大学法学部教授 明照 博章

 現在の関係性(状況)は、歴史的に作られたものです。そして、必然的な感じもします。
 一方で、「歴史に必然はない。必然性があるように『みえている』だけである」という主張があります。これには、説得力があり(個人的には)、これを前提にすると、現在の関係性(状況)は、偶然であり、改変可能であるといえそうです。

 「現在」に関して、なぜ、「一見」「矛盾」ともいえる捉え方ができるのでしょうか?

 その理由は、歴史的事実の繰り返し不可能性とその事実に至った背景にある原因の雑多性にあります。

 歴史的経緯は、「一発勝負」であり、「過去」となり、一旦、確定したものは動かないことになっています(タイムマシーンは、現在のところSFだけの存在です)。そうすると、歴史的に決定され動かなくなった結果(事実)に対する直接の原因は存在します。
 例えば、第一次世界大戦の直接の原因は、サラエボにおけるオーストリア・ハンバリー帝国の皇太子夫妻暗殺事件です。
 しかし、その原因の背景には雑多な要素があり、仮に同じ条件であっても、「私たちが知る」歴史(的展開)とは異なる展開を示す可能性は十分にあります。背景的要素は、偶然の寄せ集めだからです。

 事に臨んでは、ほぼすべての人が準備をします。そして、人によっては、ほぼ確実というレベルに達することもあります。しかし、「ほぼ確実だけれども、やってみなければわからない」という「不確実」な関係が存在します(例えば、オリンピックの金メダル獲得。もしかすると、大学受験も?)。「やるまでもなければ、やる必要がない」わけです。この不可実性の中に、人は「ドラマ」を見るのでしょうか。これは、自分にも起こり得る現象だから、みんな、心を動かされるのでしょう。

 年齢を重ねて、過去を振り返ってみると、「あの時、ああなっていれば…」という場面があります。「過去」において「現在進行中」であったときは「偶然」であり、「現在」において振り返っているときは「必然」になっている場面です。

 過去(の関係性)は、固定されていて、必然となっています。そして、消すことはできません(「忘れること」は可能ですが)。これに対して、未来(の関係性)は、自分の希望を実現することが「可能」である領域です。

 どんなに努力しても変更できない関係性はありません。過去の関係性を除いては。