学部長あいさつ

法学部長 倉澤 生雄
Ikuo KURASAWA

慌ただしい世の中を生きるために

 松山大学法学部は、四国の私立大学の中で唯一の法学部として昭和63 (1988)年に開設されました。そして、今年で開設30年を迎えます。この間に、弁護士となり活躍している者、法曹を志して法科大学院に進学する者、公務員として国や地域を支えている者、地域に貢献しようと民間企業で活躍する者など多くの卒業生を輩出しております。30年の経過は、本学部卒業生を、それぞれの地域または分野において中心的な役割を果たす人物へと変えていったのではないかと考えております。

 30年前と比較すると、現代は技術の進化はもとより進化する速度が増していき、私たちを取り巻く生活環境はどんどん変わっていっています。一言でいうと「慌ただしい世の中」とでも表現できるでしょうか。慌ただしい世の中というものは、学問の世界にも投影されています。経済的利益を生み出すもの、しかもすぐに目に見える形で生み出すものに高い価値が置かれています。また、いかに効率よく解答を出すかということに高い価値が置かれているようにも思えます。しかし、ちょっと考えてみてください。憲法13条が規定する「幸福」「個人として尊重される」、または、最近とかく話題になる憲法9条が規定している「国際平和」といった言葉一つとってもどのように考えたらよいのでしょうか。インターネット検索で表示された内容が答えという訳ではありません。それを答えにすべきではないし、効率性優先で答えを見つけるべき性質のものではありません。慌ただしい世の中だからこそ、先人たちは何をどのように考えてきたのか、現代の世の中はどのようになっているのか、自身のアンテナを張り巡らし、脳をフル回転させて時間をかけてじっくりと考えることが必要なのです。

 法学部では、学生たちが法律または政治にかかわる文章を正しく読み取り、考え、そして考えたことを他人に正しく伝えられるようになることを目指して、講義及びゼミを配置しています。慌ただしい日常では「いい」「だめ」または「その日は都合が悪い」といった一言または一文のコミュニケーションの積み重ねでも、特段不自由なことはないように思えます。しかし、上記のような抽象的な言葉の意味について考え発信するとき、または日常生活で生起する紛争を解決するにあたり、誰が何についてどのように主張しているのかを正確に把握するためには、一言または一文の積み重ねだけでは不十分なのです。人の考えを正しく理解すること、自分の考えを順序立てて相手に正しく伝えること、このような基礎的な能力の涵養こそが慌ただしい世の中を生きていくには必要なのです。大学生という人生の中でもっとも柔軟なときに、法律を学びながら、このような能力を身に着けていってほしいと考えています。