研究室訪問(古屋先生)

指名債権譲渡研究の原点
 ―『ドイツ債権譲渡制度の研究』の刊行―

古屋 壮一 教授

法学部 教授 古屋 壮一
Soichi Furuya

 2007年に『ドイツ債権譲渡制度の研究』(嵯峨野書院)を刊行しました。

 現行日本民法467条が梅謙次郎を中心に、穂積陳重および富井政章という3人の法典調査会民法典起草委員によって1895(明治28)年に起草されるにあたり、3起草委員が参照した外国法典のうちフランス民法の規定については解明されているものの、ドイツ民法草案の規定とその立法趣旨(なぜその規定が置かれているのかということ)はこれまで十分に明らかにされてこなかったことを受け、本書は、ドイツ民法草案の資料(立法資料)からこれを把握したものです。梅らが参照した外国法典を調べていくことは、現行日本民法467条の正確な理解につながります。本書では、ドイツ民法(1900年施行)よりも早く施行されたフランス民法(1804年施行)を意識してまとめられたドイツ民法草案からヒントを得て、フランス民法に基礎を置く現在の判例通説である到達時説ではなく、確定日付説を主張しました。本書でのドイツ民法草案の検証に続いて、3起草委員が参照した他の外国法典(プロイセン一般ラント法やザクセン民法など)の規定とその内容を調査し、現行日本民法467条の解釈への示唆を探る作業を続けています。

 本書は、法務省法制審議会民法(債権関係)部会において、民法(債権関係)の改正に関する比較法資料とされました。

 私は、担保方法としても用いられる指名債権譲渡を研究しており、大学のゼミにおいては、指名債権譲渡はもちろん、抵当権などの担保権についても判例を素材として学生諸君と議論を重ねています。こうしたこともあり、ゼミのOBOGの多くが金融機関に就職しています。金融機関に勤務しているOBOGから、「先生の本を読んで勉強したという金融関係者がいました。」と聞き、自分の研究が金融実務に有用なものとなりつつあることを嬉しく思ったことがあります。

著書『ドイツ債権譲渡制度の研究』(嵯峨野書院、2007年)
著書『ドイツ債権譲渡制度の研究』
(嵯峨野書院、2007年)

【略歴】

1977年広島市生まれ
2000年明治大学法学部法律学科卒業
広島大学大学院社会科学研究科法律学専攻博士課程後期修了
博士(法学)(広島大学)
同 年熊本県立大学総合管理学部総合管理学科講師
2008年熊本県立大学総合管理学部総合管理学科准教授
2009年松山大学法学部法学科准教授
2014年松山大学法学部法学科教授(現在に至る)