松山大学法学部長 倉澤 生雄
新型コロナウィルスの感染拡大を抑制するという観点から、卒業式の挙行を中止し、学位記の授与も郵送することになり、例年とは大きく異なる春を迎えることになりました。保護者の皆様、教職員そして関係者が一堂に会して、みなさんの新たな旅立ちを盛大にお祝いする機会を失ってしまったことを大変残念に思います。また、みなさんも、晴れやかな姿を保護者の方に披露することのないまま社会に旅立っていくことになり、何かすっきりしない気持ちを抱えて卒業の時を迎えているのではないでしょうか。
日頃、私たちは、1年間という期間を、突発的な事態が生じないことを前提にしてスケジュールを組み、スムーズに物事が進むことを考えて人を配置し、物を蓄えて備えているのです。しかしながら、今回の事態で私たちの考えの及ぶ範囲が極めて狭いことに、そして、スムーズな社会が、かくも貧弱な基盤の上に成り立っていることに気付かされたのではないでしょうか。それでも、毎日の暮らしは続いていきます。このような気付きを得て、私たちは毎日の暮らしにどう向き合ったらよいのでしょうか。私からはひとつの指針を示したいと思います。それは、今を精一杯生きることです。みなさんには、今できることに最大限のエネルギーを注いでほしいと考えます。同じ日常が続くと考え、明日にすればいいやと先延ばしにしたばかりに、一夜にして状況が変わり、二度と行うことができなくなるなんてことはままあることです。日常というものは、当たり前には続かないものなのです。また、みなさんは自身の周りの空気を読むことに長けている反面、自分の欲望を抑え込み、欲望の実現を先延ばしにしてしまう傾向が強いように思います。これからの人生、周りの空気を読むことにではなく自分を輝かせることに貪欲になり、そこにエネルギーを注いでいってほしいと考えます。これが今を精一杯いきるということです。
最後になりますが、どのような状況にあっても、松山大学教職員は、みなさんの卒業を心より祝福しています。そして、文京町のキャンパスから、みなさんの健康とこれからの活躍を心より祈っています。