歴史の研究に必要なものとは

松山大学法学部准教授 伊藤 信哉

 私は法学部で政治外交史Iという科目を担当しています。具体的には「日本近現代史」なのですが、そう聞くと皆さんは「あぁ、暗記科目かぁ」と思われるかもしれません。たしかに中学や高校で、地歴と公民は「暗記科目」と呼ばれています。だから苦手という人も多い(多かった)のではないでしょうか。じつは私もそのひとりでした。

 しかし大学で学ぶ「歴史」は、暗記科目ではありません。もちろん憶えなければならない(というか自然に憶えてしまう)ことは多いのですが、むしろ「勝負」はそこからさきにあります。

 今年は2015年です。ちょうど100年前といえば、第1次世界大戦のただなかでした。これが高校までですと、中間テストで「三国同盟と三国協商のそれぞれの構成国を答えなさい」とか「参戦直後に日本軍が攻略した地域の名前を書きなさい」とか問われるのですが、大学ではちょっと違います。

 「第一次世界大戦は回避できたか。できたとすれば、そのために誰が、どのような政策をとるべきだったか」

これが試験の問題です。みなさんが答えなければならないのは、年号や地名、国名ではなく「なぜこの戦争が起きたのか」という理由と、それを回避できたかという「可能性」です。もちろん丸暗記してきた単語を書くだけでは合格できません。その場で自分の考えを組み立て、それが相手に伝わるよう、説得力のある「文章」で答える必要があります。

 私が政治外交史の最初の講義で、かならず言うことがあります。「歴史を学ぶのに不可欠な能力は記憶力ではない。想像力である」。当時の日記や手紙を読むと、1914年の7月に世界大戦がはじまったとき、戦場に向かうほとんどの兵士たちが「この戦争は半年で終わる。クリスマスには家に帰れる」と考えていました。実際のところ、戦争は4年以上も続くことになるのですが。ではなぜ、彼らはそんな甘い見通しを立ててしまったのでしょう。

みなさんも大学で、そんなことを「想像」してみませんか。