国際関係論について

松山大学法学部准教授 宮下 雄一郎

 高校生の皆様、国際関係論という学問をご存知でしょうか。それほど古い学問ではなく、政治学を軸に、法学、歴史学、哲学など、多岐にわたる既存の学問を土台に誕生し、成長したのが国際関係論です。

 このように多数の分野から生成した国際関係論は、国際政治論、国際関係史、国際文化交流論、国際政治経済学、国際組織論など「国際」と銘打ち、さらには「~学」や「~論」と語尾につく数多くの関連分野を内包しています。安全保障論やジェンダー論など、「国際」の二文字が頭につかない分野もあります。

 では一見、寄せ集めに見える国際関係論は、どのようなテーマを共通項にした学問なのでしょうか。端的に言えば、国家間関係など、国内社会の文脈を超えたテーマ全般にまつわる事象を扱う学問でして、国家に限らず、国境を越えて活動する様々なアクター(行為主体)が分析の対象になります。アクターとは、日本やアメリカといった国家のほか、巨大企業、アルカイダなどの国際テロ組織、マフィアなどの犯罪者集団などのことです。

 こうしたアクターが引き起こす、国家間の戦争、経済活動、テロなどが重要な研究テーマとなりますが、その他、宗教対立の問題、移民・難民問題、科学技術や情報の伝播、伝染病の拡散をめぐる問題、貧困問題、そして地球温暖化など環境問題が重要なテーマになります。

 以上のように、国境をまたいで起きる現象の多くが研究の対象になるわけで、幅広いテーマを学ぶことができます。これは、国際関係論が散漫でとりとめもない学問であるというわけでは決してありません。私たちの住む現代世界の現実の多面性をあらわしているのです。

 国際関係の舞台は、国家を軸としたアクターがひしめく広大なアリーナです。そこは楽園とは程遠く、様々なアイデンティティーが衝突し、紛争の絶えない世界であり、本質的に不安定なのが特徴であるといえるでしょう。人は少しでもそれを安定させるために理想の国際秩序を追求し、時に実現し、時にそれを阻む現実に直面し、挫折するのです。

 戦争と平和の問題をはじめ、研究し、学ぶべき課題は尽きません。現代、そして歴史を直視することで、こうした問題に対する理解を深めることができます。松山大学法学部では、国際関係論に関連する多数の講義を揃え、学びたいという意欲を持った高校生の皆様を迎え入れる準備をしております。是非、松山大学に!

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