松山大学法学部准教授 倉澤生雄
18歳から選挙権の行使を可能にする公職選挙法改正案が、今、国会に提出されている。改正法が可決・成立すると、来年夏の参議院選挙から18歳以上の国民は投票できるようになるという。この記事を読んでいる高校生の中には、選挙権の行使について積極、消極またはどちらがいいのかわからないなど、さまざまな考えがあると思う。中には、どうせ大人が勝手に決めたこと、と冷めた目で見ている人もいるかもしれない。
今の日本において、「自分たちが自分たちのことを決める」という建前は、憲法原理と切り離せないとても大切なものである(何がどう大切なのかは、ここで述べる紙幅がないので、大学に入ってからぜひとも学んで欲しい)。しかし、「国の政治の成り行きを、自分の投票行動で決めている」、私の経験からしてもそう感じる機会は確かに少ない。選挙を通じて自分たちの意思を政治に反映させるという意味での投票というのは、実は難しく、ひょっとするとうまく機能しなくなっているのかもしれない。
ところで、皆さんは、選挙で投票するよりも、より直接的にそして具体的に自分の意見を国や自治体に反映させる機会や仕組みが存在していることを知っているだろうか。最近の国や自治体の活動では、何か政策を決定するに当たり、国民からの意見を聴く機会を頻繁に設けるようになってきている。例えば、国が何かを規制するための規則を作成する時、その規則案は公表され、国民からの意見を募っている。これを意見公募手続という。「電子政府の総合窓口(e-gov)」というサイトをググってみてほしい。目下、意見募集中の規則案を見ることができ、この案に対する意見をインターネット経由で述べることができる。また、自治体がまちづくりを行ったり、事業者が大規模開発行為を行う際には、影響を受ける住民が説明を聞き、意見を述べる公聴会が開催される。公聴会の中には開催を法律で義務付けられているものもある。さらには、自治体の取組みの中で、いろんな形態で市民の意見を聴く仕組みが導入されてきているのだ。
「自分たちが自分たちのことを決める」にあたって、これらの制度は有効である。選挙の時だけ盛り上がり、あとは政治家・官僚にお任せをしてしまう選挙だけの「主権者」ではなく、これらの制度を通じて、恒常的に国または自治体に関わっていく本当の主権者が増えていくことを望んでいる。