高校までの学習内容と大学における学習内容
受講生は、両者の違いについて説明できるだろうか?
まず、法学部では、高校までに使っていた言葉とは異なる用語を用いることが多い(専門用語)。そして、日常用語にある言葉であっても、意味の異なることもある。例えば、民法上、「善意/悪意」は、日常用語で用いられているような、道徳的な意味を含まない。「善意」は、「知らないこと」、「悪意」は、「知っていること」を意味するだけである。また、刑法上、「無価値」は、「ちっぽけで意味のないもの」よりも積極的な意味をもつ。「ある行為が無価値である」と表現する場合、その行為が(刑法上)「許されない」ことを示している。このように、日常用語と異なる用法である法律用語を知り、使いこなせる必要がある(使用言語の違い)。
次に、専門用語の使い方がわかっても、そのルールを適用する(理由づける)ときに困ることがある。例えば、「Aは、Bを殺害した」という場合、Aは、常に悪いことをしたといえるのだろうか? 通常は、Aは、悪い行為をしたといえる。しかし、Bが日本刀で襲い掛かってきた場合、Aは戦争に行き、前線でBを殺害した場合…これらの場合、Aは悪いのだろうか? これは、「各人が『暗黙の前提』として認識している『良い/悪い』の基準は、どの範囲で適用できるのか」という問題である。また、事実をどのように決めるかについても、困ることがある。例えば、森の奥に、大木が倒れていた場合、それが倒れるとき、地響きがしたといえるか? 通常であれば、地響きがした可能性が高い。しかし、そこには誰もいなかったので、この推論が正しいかどうかはわからない。これは、「大木が倒れている場合、『地響きがした』という事実をどのように決めていくか」という問題である(思考方法の違い)。
受講生は、以上の文章を読んで、「高校までの学習内容と大学における学習内容」の違いを理解できただろうか?
今はできていなくても構わない(2019.04.16)。しかし、受講生(少なくとも、法学部生)には、「大学における学びの視点-法学部-」終了までに理解できている(少なくとも、そのきっかけをつかまえている)ことを期待する。