松山大学法学部准教授 牧野力也
「人生のターニングポイント」というと、皆さんはどんなイメージをもっていますか?「ビビッときた」り(古い!)、悩みに悩み抜いてからの決断だったりするでしょうか?もちろん、人生にはきっとそんなドラマチックなターニングポイントに出会うこともあるはずです。ですが、そうではない場面だって人生にとって重要な「出会い」かもしれません。
私の専門は憲法学ですが、研究者としては主に韓国の法制度や憲法判例を素材とした比較憲法研究を行っています。日本における韓国憲法の研究者は、現在でもあまり多くいないため、学会などで他の研究者の方から驚かれることも珍しくありません。そしてたいていこう聞かれます。「なぜ韓国憲法を研究しようと思われたのですか?」これに対して私の答えは至って平凡です。「たまたま手に取った本に「韓国」のことが紹介されていて、当時お世話になっていた教授に「韓国憲法」を専門とする研究者を紹介されたからです。」
実際にはもうちょっといろいろな経緯がありましたが、当時の私には自分が人生の重要なターニングポイントに立っているという意識は全くなかったように思います。ただ、「あの時本を手に取って」いなければ、「あの時教授の勧めに従って一人で学会に赴いて」いなければ、おそらく今の自分は存在しなかったでしょう。そう思ってみると、それらは確かに私の人生にとって重要なターニングポイントだったのだと思います。まったくドラマチックなものでもなければ、客観的に見て大した決断を下したわけでもありませんよね。ですが、その場面に「出会った」ことで、私の人生は確かに「韓国憲法の研究者になる」という道につながりました。
学生の皆さんの中には、まだ自分が本当にやりたいことや将来の明確な目標を持っていないという人も多くいると思います。中には、友人が明確な目標を持って学生生活を送っているのを見て内心焦っていたり、やりたいことが見つからないもどかしさを感じたりしている人もいるかもしれません。ですが、意外と「出会い」はどこにでもあるのではないかと思います。ですから、周りの学生や教員との「出会い」と、そこから得られる刺激を大切にしてください。最初はあまり気乗りがしない「出会い」であっても、一歩進んでみると違う見え方があるかもしれません。皆さんがこれからの大学生活の中でいろいろな「出会い」を見つけ出せるよう願っています。