松山大学法学部准教授 山川秀道
大学(教育‐研究機関)では、成績評価のためにレポート課題の提出を求められることがよくあります。レポートにはいくつかの種類がありますが、次の基本ルールは共通します。それは、「他者の研究(先人の知識)に敬意を払いながら記述していること」です。例えば、レポートの書き方に関する解説書の一つは次のように述べています。
「先人の知を借りたにも関わらず出典を示さない行為は剽窃にあたります」(注1)。
剽窃や盗用というと、①他者の研究成果を、本人の同意なく、自分のものとして公表する場合(知的財産の泥棒)のみをイメージするかもしれませんが、②他者の研究成果を、「適切な表示」なく利用することも含まれるという見解が浸透してきています(注2、注3)。また、「他者の著作物である研究成果」を参照した場合には、その著作物を「適切に表示すること(出典の明示)」は「法律上の義務」でもあります(著作権法48条、32条及び122条参照)。
実際、死刑制度の是非をテーマとするレポートを読んでいる際、「現在、144か国が死刑を廃止している」という記述を見つけると、読者としては、「自分で数えたの?どうやって?」、「『現在』とはいつのこと?」、「廃止とは、、、」などと質問したくなります。「2020年の時点で、144か国が死刑を法律上又は事実上廃止している」という情報は、アムネスティ・インターナショナルという非政府組織が調査した成果です(注4)。「その成果に敬意を払いながら」レポートを作成するには、出典の明示が必須です。
色んな資料を読み、必要な出典を明示しながらレポートを作成するのはひと苦労です。そうであるからこそ、大学生のレポートも立派な学習‐研究成果として、敬意をもって扱われるのではないでしょうか(実際にはそのようなレポートは少なくとも)。
教員は、大学生らしいレポートを待ち望んでいるのです。
出典
(注1)佐渡島紗織〔ほか〕『レポート・論文をさらによくする「引用」ガイド』大修館書店、2020、10頁
(注2)米国の研究公正局(ORI)がそうした見解を示しています。
ORI Policy on Plagiarism (web)【https://ori.hhs.gov/ori-policy-plagiarism(2023年2月27日閲覧)】参照。
(注3)平成26年8月26日、文部科学大臣決定「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」PDFファイル10頁参照。【https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf(2023年2月27日閲覧)】
(注4)アムネスティ・インターナショナル日本「2021年の死刑判決と死刑執行」PDFファイル2頁参照。【https://www.amnesty.or.jp/library/report/pdf/statistics_DP_2021.pdf(2023年2月27日閲覧)】