松山大学法学部准教授 伊藤信哉
質問です。日本茶といえば「緑茶」。西洋のお茶(Tea)といえば「紅茶」。
では「中国茶」といえば?
....たくさんのみなさんが「ウーロン(烏龍)茶」と答えるのではないでしょうか。あるいは「いや、中国にはジャスミン(茉莉)茶もあるだろう」と考えるひともいるかもしれませんね。
中国は「お茶発祥の地」ともいわれ、大まかには「緑茶・白茶・黄茶・青茶・紅茶・黒茶」の6分類、細かく分ければ数千種類ものお茶があるといわれます。
ちなみに烏龍茶は青茶の一種、茉莉茶は緑茶や白茶、青茶にジャスミン(茉莉)の花の香りを染み込ませたもの(花茶)です。
意外かもしれませんが、中国で、いちばんよく飲まれているのは「緑茶」で、その生産量は、お茶全体の6割を超えるとのこと。わたしも、妻(中国人)の実家に帰省するたび、お茶の卸売市場に出向いて、気に入った緑茶をまとめ買いし、自宅や研究室で毎日嗜んでいます。それに較べると、烏龍茶はややマイナーです(茉莉茶はそこそこ飲まれてますが)。
では、なぜ日本で「中国茶=烏龍茶や茉莉茶」という理解がひろまったのでしょうか。諸説ありますが、ひとつは中国から日本に渡ってきた華僑・華人の多くが福建省の出身で、福建で愛飲される烏龍茶や茉莉茶が、彼らによって日本に持ち込まれ、経営する中華料理店などを通じてひろまったというものです。もうひとつは、中国で「改革開放政策」がはじまった1980年代、多くの日本企業が進出したさきが福建省だったため、そこで飲まれていたこれらのお茶が、中国全土でも同じように飲まれていると「誤解」されたというものです。
真相はよくわかりませんが、北京などを訪れる日本人観光客が、申し合せたように烏龍茶を「中国みやげ」として買いにくるため、現地のお茶屋さんも、それまでまったく扱っていなかった烏龍茶を、日本人のためにあらたに販売しはじめた、なんて話を聞いたこともあります。
もし将来、みなさんが中国に行く機会があれば、ぜひとも現地で、さまざまなお茶を楽しんでみてください。個人的なお薦めは、四川省でよく飲まれる「竹叶青(春竹または雀舌とも呼ばれます)」と、浙江省でとれる「龍井」の、2種類の緑茶です。