会社で一番偉いのは・・・?

松山大学法学部教授 内海淳一

 さて、問題です。
 社長会長取締役会議長CEO頭取代表取締役、これら株式会社の役職者で一番偉いのは誰でしょう?

 答えは、これと断定するのは非常に難しいですが、法律(会社法)的には、「代表取締役」となります。一般に、当然それは「社長」でしょう!という人が多いと思いますが、原則として社長には法律上の地位は一切なく、会社内や世間的に通用している“偉い役職名”にすぎないのです。法的に権限を有するのは代表取締役で、会社法(349条4項)では「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」と規定されています。ということで、社長さんの名刺に、肩書として「代表取締役社長」と記載されているのをよく見かけます。

 つぎに、「会長」とは、“取締役会の代表者”を意味しています。取締役会は、基本的に社長を含めた会社経営を担う取締役の会議体です。その代表者である会長ですが、多くの会社では実際の経営トップは社長が行っていることから、必ずしも実権を有しているとは限りません。したがって、「代表取締役会長」の肩書がない限り、法的権限はありません(いわゆる名誉職)。しかしながら、日本の企業風土では、社長経験者が会長に就任する場合が多々見受けられるので、社内の人間関係として社長に対し指導的役割を果たしていることがあります。

 また、会長とは別途、取締役会の議事進行役として「取締役会議長」がいます。ただ、取締役会議長は、社長が兼任している場合が多いのですが、取締役会は経営トップ(通常、社長)が他の取締役等に経営状況を報告する場なので、公平性の観点から、これを分離(社外取締役など)している会社もあります。

 「CEO」とは、“Chief Executive Officer”の頭文字をとった略称で、最高経営責任者と訳されています。この肩書は、アメリカ的な経営トップを表示しています。したがって、日本の場合は、社長と同じような事実上の役職者です。ただ、日本でも法的にアメリカ的な経営トップとして、「代表執行役」という役職があります(このタイプの会社には、代表取締役はいません)。この場合の代表執行役と取締役会の関係は、取締役会が代表執行役の人事権を握っています。したがって、取締役会は、代表執行役の監視・監督を行うチェック機関となっています。

 「頭取」は、歴史的に銀行の代表者肩書として広く使用されています。したがって、一般の会社の社長と同じ意味となります。語源的には、諸説ありますが、雅楽の首席演奏者である“音頭取り”から、音頭をとる人=頭取になったとも言われています。

 このように、会社には色々と偉い人が存在しています。

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