松山大学法学部長 倉澤生雄
10月の爽やかな陽気の下、後期がスタートしました。
今年は、コロナ感染拡大に対処するために、授業開始日を5月下旬に繰り下げました。そのために、前期の授業日が9月の上旬に食い込んでしまいました。前期の期末試験を終えた後、「夏季休暇」といっても季節はすでに秋に移っていましたし、休暇といっても、国内でさえ自由に移動するのもはばかられたことでしょう。また、多人数で集まることも遠慮しなければならないなど、みなさんの若さから溢れるエネルギーを、思う存分発揮するというよりもむしろ抑制しなければならない、そんな夏季休暇を過ごしてきたのではないでしょうか。
後期もまた、講義は基本的にオンラインで実施することになります。そのため、前期と変わり映えしない大学生活になってしまうのではと不安に思う人、場合によってはうんざりと思う人もいるかもしれません。自分と自分の周りの限られた範囲だけを見ていると、確かに同じような光景が目に入り、同じような日常を繰返す気分になってしまうのかもしれません。これだと、確かにやる気も起きなくなってしまいます。しかし、みなさんの視点を、自分の周辺からもっと広い世界に向けてみましょう。幸いにも大学生の期間は、人生の中で比較的自由になる時間があるときです。また、好奇心も強いときなので、自身の視野を広げやすいときでもあるのです。
コロナウィルスによる私たちの生活の変容は、私たちがこれまで当たり前としてきた前提をひっくり返し始めています。例えば、利便性の高い都市部への人及び物の集積と情報の集中は、経済発展の鍵とされてきました。しかしながら、都市部への人の集中は、ウィルス感染拡大に対して脆弱であることを突き付けています。また、財政削減のため、国または公共団体が担ってきた公的サービスを、規制改革の名の下に民間事業者に担わせて公的部門の人員と業務を削減してきました。その結果、保健所などコロナ感染対策にあたる公務分野の業務がぎりぎりの状態に陥っていることが露になりました。私たちは、これらの問題点を知ることができたものの、まだ、それを解決するための方向性ないしは手段を見つけることができていません。時代は、新たな知見を必要としているのです。「今、学んでいることが時代の欲する新たな知見になっていく。」そんな風に考えてみると、胸が高鳴ってくるのではないでしょうか。日々の生活及び大学での学びを、狭隘な世界からではなく、広い視野からとらえなおしてみてください。同じ日常の繰り返しなんかではなく、きっと張合いのある日々に変えてくれるでしょう。
2020年10月1日