あなたはわざとやりましたね(故意の認定)(上)

松山大学法学部教授 明照 博章

 犯罪が成立するためには、故意が必要になる(刑法38条1項本文:罪を犯す意思がない行為は、罰しない)。ある人Aが犯罪を行ったことについて、警察及び検察が捜査して、検察官が「Aはおそらく犯罪を行っているだろう」と判断した場合、起訴する(公判請求ともいいます:刑訴法247条:公訴は、検察官がこれを行う)。
 そして、検察官と被告人(検察官が公訴を提起した対象者(ここではA)。なお、被告人には、通常弁護人につきます)が「当事者」となり、それぞれ主張を行います。その主張を踏まえて裁判所(裁判官:裁判員裁判の場合は裁判員も)がいずれの主張がより説得的かについて評価する。

 では、故意の存否(Aに対して「あなたはわざとやりましたね」と言えるか否か)の判断はどのようになされるのだろうか?
 故意は「主観的要素」/「内心的要素」なので、本人(ここではA)以外にはわからないことにもなりそうである。そうすると、Aが自ら「わたしはわざとやりました」と言わない限り、故意を認定できないことになるのだろうか?
 実際には、客観的事情から、主観的要件を推認することによって犯罪の成否を検討していくことになっている。

 ここで、被告人に対して「あなたはわざとやりましたね」と言えるためにはどのような過程を経る必要があるかについて、具体的に考えてみる。

 Bから警察署に対して、①会社からの帰り道、自分のバックを奪われたこと、②その際、治療に3か月を要した怪我をしたこと(医師の診断書あり)について被害届が出された。警察の捜査等によって、犯行現場付近で、Aと被害者Bがもみ合っているところを見たという情報提供を複数の者から得、その後、捜索令状をとり、Aの自宅を捜索したところ、Aの部屋からBのバックが見つかった。

 この場合、Aは、初めからBのバッグを奪う意思で暴行を行ったのか(この場合強盗傷害罪)そうでないのか(この場合傷害罪と窃盗罪)が問題となる。

 検察官は、AがBのバックを奪う目的でBに暴行を加えてBのバッグを奪ったとし、Aを強盗致傷罪で起訴した。
 被告人側はどのような主張をするのだろうか?
 結局どのような結論になるのだろうか?

 それは次回、考えたいと思う。