体感治安 その2

松山大学法学部准教授 松田龍彦

 治安の良し悪し、数字と体感にずれがある。では、治安が悪くなったと、「感じる」のはどんな時でしょうか。いろいろ考え方はあるものの、犯罪に接する機会が増えたとき、という答えは、まあ的外れではないでしょうね。

 では、皆さん、一般市民が犯罪に触れるときって、いつでしょう。一番わかりやすいのは、身の回りで犯罪が起きた時。「自ら手を染める」方は少数派でしょうから、犯罪の被害にあった時でしょうか。街を歩いていて、変な奴に絡まれて暴力を振るわれた。家に帰ったら、鍵がこじ開けられていて、高価な物やへそくりがなくなっていた。妙な連絡を真に受け、お金を振り込んだら詐欺だった。こんなのが典型でしょうか。交通事故の被害も入るかもしれません。こっちは命の危険がある分、よりぞっとする話かも。私の受けた被害例で分かりやすいのは、ハンドルロックとワイヤーまでかけた愛用の二輪車を盗まれたことでしょうか。

 この場合、被害者の体感治安は底辺まで落っこちます。それはそうです、真っ当に生きてきて、「今までそういう目に遭っていなかった」のですから。その話を聞いた周りの人の体感治安も、結構下がるでしょう。何せ「身近に犯罪が起こった」のですから。さらに、井戸端会議の時代と違って、現代ではSNSがあります。詐欺の被害のように、自らの落ち度もあって犯罪の被害を受けた、というのでない限り、「悪事千里を走る」ではありませんが、あっという間に拡散します。知らせを受けた人が被害者をどれだけ近くに感じているかにもよりますが、被害感情は共有され、体感治安は下落するでしょう。

 これが、ある人が受けた1件の犯罪被害による、体感治安の悪化の正体の「一部」です。

 では、前回出した数字を見るに、刑法犯だけで年間60万件以上、これらがあちこちに影響を与えているので、体感治安は下がりっぱなしなのだ、と結論付けていいかというと、そう単純な話でもありません。

 ……古のマンガのセリフを借りるならば、「もうちっとだけ続くんじゃ」ということになりそうです。

前回の「体感治安」もあわせてご覧ください。

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