大学の講義とゲーム実況

松山大学法学部准教授 石橋英典

 私は大学生の頃からゲーム実況が好きでよく見ていました。今も見ています。そして、ゲーム実況をみながら、ふと、「大学の講義もこんな感じだな」と思うことがあります。

 「ゲームと勉強と全く違うだろ、大学の講義は単位がかかっているんだぞ!」と言われればその通りですが、意外と似ている部分もあるのです。たぶん。

 私が担当する「民事訴訟法」という講義は、半年間(正確には4か月程度?)で1コマ90分の講義を30コマ行います。それだけ聞くと、とんでもない時間をかけて、民事訴訟法を解説しているように聞こえますし、「民事訴訟法でそんなに説明することがあるのか」とも思われるかもしれません。

 ところが、この時間では全く足りないのが現状です。かつて私が大学院生の頃にお世話になった先生が「民事訴訟法を40年以上、学び教えてきたけれども、それでもわからないことだらけだ」とおっしゃっていたのを今でも覚えています。そんな民事訴訟法を、わずか30回の講義で語りつくすことは、少なくとも私には到底不可能なのです。

 これは、あたかも、大作の長編RPGゲームを限られた回数で実況するようなものではないかと思うのです。限られた回数なので、レベル上げ作業やサブクエストといった、「実際プレイするなら、そこが面白いのに」といった部分はカットせざるを得ません。その上で、メインの内容がわかるように動画を編集し、解説を入れたりすることで、視聴者にそのゲームの良さを知ってもらおうと努力します。そして、「このゲームには実況した部分以外にも面白い部分がたくさんあるので、是非、自分でプレイしてみてください」と言いつつ、ゲーム実況が締めくくられます。もちろん、このほかにもいろんなスタイルの実況動画あるので、こういった動画ばかりではありませんが。

 話を戻すと、私の講義でも、30回という限られた講義の中では、民事訴訟法の基本的な部分をダイジェスト版で解説せざるを得ないため、どの部分をどこまで説明すればよいか頭を抱えつつ、日々、泣きながら講義資料を作成しています(この涙は、面白い論点を紹介できないからではなく、資料作成の作業の辛さに由来する涙です)。そして、講義の中では、「この講義だけでは民事訴訟法の面白い部分をすべて紹介できないので、是非自分でも学んでみてください」と、何度も話します。

 そういった「もっと知ってみたい」と思えるような講義ができるようになりたいな、と思いつつ、ふと……「うまいこと解説ができたときにはスパチャ(投げ銭)とかないものかしら」といった邪な考えが頭に浮かんでしまうあたり、理想とは程遠いところに自分がいることを確認するのでした。

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