松山大学法学部教授 古屋壮一
先日、家族とともに上記映画を映画館で鑑賞した。笑いあり涙ありの感動的な映画であり、大変満足して映画館を出た。
乱太郎、きり丸、しんべヱや兵太夫たちは、「忍術学園」の1年は組にて、「手裏剣投げ」などの実技はもちろん、座学でも忍術を学んでいる。1年は組の「教科担当教師」は、土井半助先生であり、かなりの腕をもつ忍者であって、さりげなく子どもたちを見守る深い優しさももち合せている。この土井先生が行方不明になってしまったことから、学園長である大川平次渦正先生の命を受けた山田伝蔵先生の指揮の下、学園をあげての土井先生の捜索が始まるのである。捜索には、「忍術学園」の5年生や6年生も加わり、捜索のために「忍術学園」で身につけた忍術を駆使し、敵対勢力をかく乱したり、仲間を救出したりする。「忍術学園」においては、卒業前にすでに、忍者に求められる基礎的な能力を修得することができている。
私も、民法の「債権総論」などを法学部の学生に教えているが、基本となる法制度についてはもちろん、条文の解釈として実務にとって最も重要である判例についてもできるだけ分かりやすく学生に解説してきた。教え子たちからは、「講義やゼミが国家試験の正答率上昇につながった。」とか、「金融機関に就職してすぐの研修で民法の制度に触れる機会があったが、容易に理解できた。」などの声が届いている。法学部で4年間学べば、公務員や民間企業などを問わず、法律、条例や会社内部の規程などにおける規定を正確に読み、妥当な解釈ができる力をつけることができる。私にとって、法学部の学生は、「忍術学園」で学ぶ若い忍者たちなのである。
この映画では、ベテラン忍者である山田伝蔵先生の活躍も描かれている。山田先生は、「忍術学園」で学ぶ若い忍者たちに忍術を教えるだけではなく、長年の経験を踏まえつつ、「忍術」を使いこなして土井先生の捜索にあたる。山田先生は、自らの優れた能力を皆のために自由自在に使うのである。
他方で、私は、民法を研究してきた成果をなんらかのかたちで社会に還元できているのであろうか。私自身は、もちろん山田先生ほどのベテランではないが、少しでも山田先生に近づいているのであろうか。弁護士、検察官そして裁判官の先生方が実際の民事事件について民法を用いて妥当な解決を実現しようとするときに、参考となる民法の規定の解釈論を提供できているであろうか。取引界にとって誰もがより公平に満足できる法制度となるように、日本のみならず世界における法制度の歴史を正確に把握し、国際標準の立法モデルも意識して、その法制度の研究を深化させ、論文などのかたちで研究成果を公表できているであろうか。この映画は、こうした「重大な問い」という「手裏剣」を私に向かって放ち続けている。