法学部での学びを通じて人間力の向上を目指そう

SEN Yoshiharu
松山大学の歴史は、1923(大正12)年に設立された松山高等商業学校にさかのぼります。初代校長の加藤彰廉先生は、「生徒第一主義」を掲げ、教職員と一心同体となって学校運営に尽力し、本学100年の伝統の礎を築きました。1926(大正15)年の第1回卒業式において、加藤先生が説いた校訓「実用・忠実・真実」は、時代を超えて受け継がれ、校訓「三実」(現在は真実・実用・忠実と表記されている)として、本学の教育理念であり、学生および教職員の行動指針となっています。
本学法学部は、1988(昭和63)年に四国地方私立大学中の唯一の法学部として開設されました。その後の約40年にわたり、民間企業や県・市町村をはじめとする地域社会へ多くの人材を輩出しています。また、法科大学院へ進学し、法曹を目指す卒業生をはじめ、高法律の専門性を生かして活躍する人も少なくありません。近年では、2020(令和2)年に司法試験に合格し、2022(令和4)年に弁護士登録を果たした卒業生が2名います。
私たちは「他者」と関わりながら社会生活を営んでおり、円滑な社会生活を送るためにルールは必要不可欠です。本学法学部は、憲法、民法、刑法といった法学分野の専門科目を設定し、(主に明文化された法規範を念頭に置く)ルールについて学ぶ場を提供しています。皆さんはおおむね次のステップを踏んでルールについての学びを深化していきます。
①ルールの文言上の意味を知ること。ルールには日常生活で使われていない用語や、日常生活で使われているのと異なる意味をもつ用語が多数含まれているので、注意を要します。
②ルールの必要性を知ること。ルールの意味をより正確に理解するために、場合によっては、ルールの成り立ちについて学び、その背景にある社会の価値観や倫理観を理解する必要があります。
③ルールの解釈・応用を知ること。ルールの解釈論を展開する学説と、ルールを解釈して実際に応用する判例を学ぶことによって、法的思考のパターンを習熟します。
④法的な課題をルールに則って解決すること。自ら課題を設定または発見し、思考パターンを用いて学んだ知識を活用し、課題の解決に向けて取り組みます。主体的・能動的な学びの姿勢が求められます。
⑤ルールの発展的考察。現代社会の視点から現存のルールを見つめ直し、より良いルールへと発展させる視点と能力を養います。
これらの学びを通じて、リーガル・マインド(法的思考能力および法的判断能力)を身につけることを目指します。リーガル・マインドは、法的な視点から自分の行動がもたらす結果を予測してそれを実行すべきかどうかを判断するときや、トラブルが発生した際により妥当な解決策を導き出すときに活用できます。
教育の要は「人間性格の陶冶」にあります(加藤先生の言葉)。大学は学びの場である以上に、人間力向上の場です。法学部は、法学・政治学分野の専門科目に加え、他学部の専門科目も精選して提供し、皆さんが多様な分野に関する知識を学ぶことで多角的な視点を養い、よって人間力の向上に寄与するものと考えています。一方で、人間力の向上において、キャンパス内外の実社会で他者と積極的に関わりを持つことも重要であることはいうまでもありません。多様な人々と意見を交わし、相手の立場を尊重しながら信頼関係を築き、柔軟な思考力やコミュニケーション力が生まれてくるからです。
大学生活では、自らの意思で選択・決定し、時間をコントロールする自由度がいままでの学校生活と比べて格段に高くなります。この「自由」を有効に活用できるように、あらかじめ目標を設定し、それを達成するための計画を立て、主体的に学び、成長する力を身につけてください。そして、大学で培った力を社会人として次のステージで大いに発揮し、未来へ羽ばたいていくことを心から期待しています。
松山大学法学部長
銭 偉栄(せん よしはる)